ふるる

電車はもう乗り終えた
飴の袋もからっぽ
歩き出す
足元の道はごつごつしている
日の光は花や木にばかり当たっている
ような気がする
水が飲みたい
と思った矢先に
湧き水の立て札
山深くから湧き出る水は
山を洗い
土の中を遊び
古い里のふもと
人気のない駅前にまで来る
春と言えば春だけど
初夏と言えば初夏
若葉が欠けたガラスのように
目に痛い
冬に来ればよかったのかも
温泉もあるらしいから
自分をくしゃりと丸めて捨てに来た
けれど
きれいな湧水の前には
何も捨てられず
両手に受けて飲む
美味しいのかもしれない
素直に美味しいと言えたのなら
よかったのか
風が澄んでいる
夜には満天の星だろう
星なんて五分で飽きるわなんて
素直にきれいだと言えたのなら
よかったのか
涙はもう終えた
胸はまだからっぽ
素直にさよならと言わなければ
よかったのか
歩き出す
足元の道はやはり
ごつごつしている


自由詩Copyright ふるる 2009-05-01 20:02:59
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