眩しいため息
ことこ

浅蜊はすこやかにねむりにつき、ねむりのまに砂利を吐く。貝殻の
すきまから漏れるいくつものため息は、ぷからぷからと、海の中に
漂うもやになる。しろく、しろく覆われた先から、目をそらしつづ
けていれば、つめたさにかじかむこともなく、ほほを、髪を、なで
てゆく感触さえ、ほどけては記憶の彼方へ溶けていく。それでも。
夜な夜な漏れるため息は、いつか遠い砂浜で、ほんものの星になる
ことを夢みては息づき。ゆられ、ゆられて漂うたびに、あるいは疎
になり、あるいは密になり、しずかな呼吸とともにあまい匂いをく
ゆらす。満ちた月に引き寄せられ、ゆるやかにかかるミルキーウェ
イは、まばゆいくらいに、いとおしい。


自由詩 眩しいため息 Copyright ことこ 2009-04-28 20:37:23
notebook Home