揺らぐ、水面に
フユキヱリカ

 

水槽の底を覗くと
ハイビスカスのペディキュアを塗ったあたしの爪先に
鱗がはえてゆくの

水の中なら自由に飛べるでしょう
水の中なら


退化する肺に
後悔などしていない


水槽に背を向け
白いワイシャツを脱ぎ捨てた
きみが

きみが

 青
  に
 墜
  ち
   て
   ゆ
  く
   |
   |
   ゚


躊躇わず飛び込んだ
イルカのように寄り添って泳いで
 前世は 魚になりたい人間
 だったのではないかと

そう思った


あたしたち
生まれる前から
出会ってたのかもしれないね

それは兄弟かい?


ううん
夫婦かもね
と、きみがわらった


あの日、
空の隙間から
ふたつのなみだが
落っこちてしまって

のこりの日を
きみのそばで
共にできたら
たとえそれが
あやまちでも
貫けただろう


ねぇ、きみは
ずっとわらっていてよ


あの日、
空の隙間から
落っこちた
ふたつのなみだが

のこりの日を
愛したきみと
共にできたら

たとえそれが
愛じゃなくても
僕はよかった



2006/9/26


自由詩 揺らぐ、水面に Copyright フユキヱリカ 2009-04-27 19:24:57
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