傾いた二人
nonya


僕は右に少し傾いている
君は左に少し傾いている

まったく逆に傾いているのに
傾き具合はほとんど同じだから
二人が向い合せになると
正確に見つめ合ってしまうけれど

僕は君の傾き方を
小生意気だとあなどり
君は僕の傾き方を
時代おくれだとあざける

仲良く手をつないで歩いたり
ふいに後ろから抱き締めたり
情熱的なキスをするには
どうにも相性が悪過ぎるから

僕は君の傾き方を
セクシイだとは思わないし
君は僕の傾き方を
可愛いとは思っていないはずだ

それでもなんとなくつるんで
グラスを傾け合うのは
二人の痛みの色合いが
なんとなく似ているからだろうか

僕は右に少し傾きながら
君は左に少し傾きながら
道路の右と左で顔を背け合って
酔った勢いで罵り合っていたとしても

胸の真ん中にはきっと
同じ臭いのする叫びがたぎっている

どうして二人は
真っ直ぐに立つことができないのだろう

すうっと突っ立って
無邪気に日常と
正対することができないのだろう



自由詩 傾いた二人 Copyright nonya 2009-04-23 23:11:06
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