砂の上の植物群
かとり
雨
らくだの一群が
ゆったりとした足どりで歩いている
少し重くなった砂は瞬く間に乾いて
黒雲は遠くに行ってしまった
明るく熱い砂は
さらさらと緩い風に運ばれ
風に乗ってあるものは遠くに行き
そこで次は嵐を待つ
輝く地平に
動き始める丘
あなたの痕跡はすでに忘れ去られたが
金の原に芽吹きだしている
地下
積層の都
亡霊達の車輪が
がたがたと
せわしなく音をたてる
「馬車だ」
馬車が通る
赤い水を欲する寂しい目は
土のなかで膨れ
骨はやぶれて
新しい骨はまたつぎつぎひらける
節くれだった
指先に蕾
緑の魂は泣きながら広がる
夜
夜の砂漠
やはり私は砂丘に座って
かつて見あげた
星々を想いだしている
遠景を
描き起こすように
かの名を
声を
夜空の底の白い
砂の上の植物群を
わたしはぜんぶおぼえていたいと
午後
おたがいに匂いを嗅いで
おたがいによりそって
おたがいに愛おしんでまた
らくだ達は歩きはじめる
影を踏み
顔を振るわせ
耳を張り
黒い視線を遠くに投げて
砂を噛んだらそっと
らくだ達は歩きはじめる
自由詩
砂の上の植物群
Copyright
かとり
2009-04-18 22:13:23