瓶詰めの森
本木はじめ

罪の森きみの手を取り「逃げよう」と言った途端に僕も罪人


森のなか追いかけごっこふたりして迷い込んだねもうひとつの森


瓶詰めの蝶を埋めます木の根元「飛び立つものはすべて埋めます」


聴きながらいちまいいちまい拾いゆく散りばめられた花びらの音


ハサミで切るあなたの髪がバサバサと落ちるそばから飛び立ってゆく


つめたいねこを埋める夜かたわらで蟻を葬る果てしなき君


廃線路の上で運転してるふりの君の隣に座っています


きらめいて沈んでゆくの湖の底で逢い引き浮かびあがるまで


パチパチと手を叩いたら燃え上がる焚き火はさんであたたまるよる


ピアノ弾く君の姿を閉じ込めて水滴落ちる洞穴のなか


水面に僕らふたりの影だけが流されまいと揺れているだけ


苔むした岩に寄り添い目を閉じるあなたの森が目を覚ます森


逃げ出せば追いかけてくる村人のたいまつばかりが咲いている闇


残されし時間は沼に身を沈め鳥の声など聞いていようか


廃屋が森の一部となるように僕らふたりも森とかすよる


ダムの底深い樹海に置き去りの墓石に書かれし僕と君の名


よみがえる瓶詰め地獄ふたりして海の波間を漂ひしとき


瓶詰めの森を転んで割りました都市高速を疾る花々






短歌 瓶詰めの森 Copyright 本木はじめ 2004-08-26 19:16:09
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