思い出のはなし
Re.

山々を裂いて生まれたのはすいけんの水でした
あの時のかぜをおぼえていますか
暴風が吹き荒れ わたしの前に立ち
少しずつさがっていくわたしのせなかを撫でたのはあなたでしたか
日がおちて朧なつきが顔を出したとき
わたしのかげになり うつぶせになって

あなたはわたしが月ばかり見ているといった
きっとわたしよりもわたしのことを知っていた

これはえいえんなのだと何度も何度もささやいて
ふたりはむすばれていたのでしょう

三百年の時を経て あなたはわたしの首を絞める
あなたに赦されたわたしは今になってようやく息を吐くことができます

きっとあのひとは笑わない
それはえいえんにちかいことば

さんびゃくねん という なが い とき を へて
あなたの手はわたしの首を絞めたのです

赦されたわたしと赦したあなたは これからもきっとすいけんの水の光をもとめては
あのときのみじかいときを ただ ただ

泣いていたあなた
ないていたふたり

あなたはわたしを生き返らせようとした
あなたはすいけんの水がすきだった
あなたはげんじつをみていた
あなた
あなた あなたは
すぐさきにあるつきさえも見えずに

あなたにとっては朧なものだったのかもしれない
しずかにあたたかなやすらぎをもとめる

わたしはきっとそれをみてはまた
あのときのあなたをおもいだす



自由詩 思い出のはなし Copyright Re. 2009-04-16 00:02:43
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