草野春心


  もう静かに語る
  ひとつながりの都会



  夜の新宿を見つめながらきみは笑っていた



  その手のひらで
  やわらかい声がふくらむ



  どこへゆくの?



  ぼくはただ此処に在ることが幸せで
  そして此処に在ることを怖れていた



  暮らしてゆくことは
  痛いだろう
  呼吸を止めることよりも
  ずっと痛いだろう



  きみの思いを教えてほしい
  ずっと生きてきたのなら
  いつか死んでしまうなら



  もう静かに眠る
  ひとつながりの都会



  そうやって
  静かに
  結ぶ手も
  ほら
  ……痛い


  
  ちゃんと
  痛い



自由詩Copyright 草野春心 2009-04-15 23:25:43
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