yosomono
nonya


浅い眠りの飛び石づたいに
今日の岸辺にたどり着いた

非武装地帯の朝焼けは紫色
ただれた雲が東から順番に裏返る

もう少し痛みが和らいだら
着古した戦闘服を洗濯しよう

レンズ豆とジャガイモのスープを
凹んだ鍋で温め返している間に

昨夜の記憶の残りかすを全部
ハリネズミの穴に捨てに行こう

と思ったが
ベッドから起き上がりかけて嘔吐

苦い乱痴気騒ぎはしばらく旋回した後
見知らぬ口紅のシミに胴体着陸する

みんな挨拶してくれた
みんな会話してくれた
みんな酔っぱらってくれた
みんな笑ってくれた

猫背で猫舌のyosomonoが
たぶん物珍しかったのだろう

誰かが罵ってくれた
誰かが嘲ってくれた
誰かが哀れんでくれた
誰かが抱いてくれた

いつも最後はお決まりの袋小路に
行き当たってしまうのは笑える

別にそれでいいじゃないか?
いったいそれ以上何を望む?
次の朝までには十中八九
みんなの笑顔は壁になっている
相容れない国境になっている
どこかの壁が崩壊したなんて
いったい誰のつまらないジョーク?

たとえ前後不覚に陥っても
闇の中にこっそり開けておいた
有刺鉄線の切れ目は探し出せる
とりあえず帰ろうとする姿勢のまま
yosomonoは生き永らえている

非武装地帯の夕焼けは紫色
熟れすぎた太陽が西に崩れ落ちて
痛みが夜の輪郭をなぞる前に
今日も有刺鉄線をくぐるのだろう
yosomonoになりにいくのだろう

あからさまな嘘を見破ったりしない
あどけない悪意を裁いたりしない
猫背で猫舌のyosomonoの
ベッドの脇に立て掛けてあるSKSシモノフに
実弾がこめられていない事実は
おそらく誰も知らないだろう

別にそれでいいじゃないか?
いったいそれ以上何を望む?



自由詩 yosomono Copyright nonya 2009-04-04 10:53:42
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