春の機械
小川 葉

 
 
機械の少年は
機械の少女に会った
機械のように恋をして
装置のように結婚して
遠く秋の空を眺めると
肌が乾いて懐かしい
あれは春だったのだ
二人はそう思うと
子供が一人
また一人と巣立っていった
機械として生まれ
人として老いていく
この桜の木もまた機械として
今年も花を咲かせるだろう
生身の木になるために
かつての少年と
少女は胸に手を当てて
からだの中にある
心音を確かめている
それがある限り私たちは
機械であり
少年少女だった
 
 


自由詩 春の機械 Copyright 小川 葉 2009-03-29 22:30:41
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