YASU

6月の紫外線は想像以上に強くて
日焼けした腕の皮が剥けてきたのです

べろりんちょ と剥けたその皮をよくよく眺めて見ますと
鯵の鱗のように
金星のクレーターのように
ゾウのくるぶしのように
細胞分裂が威張っているのです

吉野家の並と味噌汁や
東横の野菜味噌ラーメンと餃子や
照り焼きバーガーとポテトLや
発泡酒や
焼酎のお湯割り 梅入り
なんかによって催促された細胞分裂が威張っているのです

ふー と部屋の隅に飛ばされた皮は
もう細胞分裂を繰り返す必要も無く
やはり部屋の隅に佇ずんでいる
猫の毛や
ダニの屍骸や
陰毛なんかと手をつないで 
一概に「ゴミ」と呼び捨てにされるのです

「ゴミ!って失礼な 俺はもともとお前なんだぞ」
と皮は僕を睨むのです

「ゴミ!って失礼な 私はもともと あなたの大好きなチャッピの喉に生えていたのよ」
と猫の毛が僕を睨むのです

ダニの屍骸も
「お前のお気に入りのセーターは何年洗っていないんだ?」
と悪態を吐き

陰毛ときては
「お前が夜な夜な 飽きもせずにこすり続けるから抜けてしまったんだぞ!」
と ちりぢりと曲がった背中をさらに丸めて 涙を流す始末です


「ちょっとは綺麗にしなさいよ!」
という妻の罵声を聞こえないふりして
そんなゴミ達の憤りを見えないふりして
今宵も発泡酒を ぷはーっ と飲みながら
べろりんちょ と腕の皮を剥いて遊んでいるのです

そんな味気ない いつもの夜にも
どこかで細胞分裂の音が響いています


ゴミ達と同じ憤りを抱えている僕は
掃除が苦手です





自由詩Copyright YASU 2004-08-23 10:02:41
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