時はただただなだらかに
ロリータ℃。



ヘミングウェイじゃないけれど
何を見ても何かを思う
この街は体に毒だ


記憶の濁流に押し流されて
立ち尽くしたまま泣きそうになる
冷たい風が刺す中で
涙だけが生温かった




自分の痛みさえも武器にしてね
あたしは少しずつ生きてゆくんだ
いつか忘れるあたしなのに
忘れぬ恋だとさざめくんだ





あなたの柔らかな体を抱いて
ただひたすらにその頭を撫でていた頃
あたしは確かに幸福だった
生きる意味はあなたにあった




愛してるよと言った唇が
あたしに密かな別れを告げた
さよならだけは信じられても
囁く愛を嘘だといなした矛盾を憎んだ




あなたは美しさに泥を隠した
あたしは膿で光を汚した
そんなあたしとあなただった
この街にいたあの頃の二人は
手を繋いで憎みあった
確かに愛していたはずなのに






ヘミングウェイじゃないけれど
何を見ても何かを思い出してしまう
今となっては毒でしかないこの街は
確かにあの頃 あたしたちの隠れ家だった











自由詩 時はただただなだらかに Copyright ロリータ℃。 2009-03-22 05:26:34
notebook Home 戻る