時はただただなだらかに
ロリータ℃。
ヘミングウェイじゃないけれど
何を見ても何かを思う
この街は体に毒だ
記憶の濁流に押し流されて
立ち尽くしたまま泣きそうになる
冷たい風が刺す中で
涙だけが生温かった
自分の痛みさえも武器にしてね
あたしは少しずつ生きてゆくんだ
いつか忘れるあたしなのに
忘れぬ恋だとさざめくんだ
あなたの柔らかな体を抱いて
ただひたすらにその頭を撫でていた頃
あたしは確かに幸福だった
生きる意味はあなたにあった
愛してるよと言った唇が
あたしに密かな別れを告げた
さよならだけは信じられても
囁く愛を嘘だといなした矛盾を憎んだ
あなたは美しさに泥を隠した
あたしは膿で光を汚した
そんなあたしとあなただった
この街にいたあの頃の二人は
手を繋いで憎みあった
確かに愛していたはずなのに
ヘミングウェイじゃないけれど
何を見ても何かを思い出してしまう
今となっては毒でしかないこの街は
確かにあの頃 あたしたちの隠れ家だった