幻影海溝 緑の刻
北村 守通

荒れ狂う
光の
残虐に
抱かれ目を醒ます
荒れ狂う
塵と共に
吹かれて漂う
荒れ狂う
春の息吹は
名も知らぬ
植物達の芽吹きは
まぶしく
指は震え
触れようとしては
引っ込めて
かけてみる言葉すら
引っ込める

  不完全に
  折れている
  枝先に
  浅い眠りのつぼみ達
  針金を
  飲み込んで
  なお逞しく
  太りゆく
  己を切って
  飲み込んで
  なお逞しく
  太りゆく

荒れ狂う
晴天の下
荒れ狂う
陽気の下
荒れ狂う
黄色い声の
雑踏の脇で
荒れ狂う
ものがない
荒れ狂う
ものはどこか
荒れ狂ることのできない
無音の鼓動
荒れ狂うことのできない
胎動
荒れ狂うことのできない
光届かぬ海底

  ぼやける視界に 
  耐え切れないのに
  日はまだ昇っている


自由詩 幻影海溝 緑の刻 Copyright 北村 守通 2009-03-20 02:15:52
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