詩的世界のグラスファイバー
北街かな

この世の何処かにある空間の一点を
ただそれのみを 一心に求めてみたんだ

汗ばむ喜びだとか 骨の抜けそうな落胆
崖っぷちの戦慄だとか 常なる先行きの不安
そういうもののたぶん向こうにある
感情を超えてゆく空間の点を

膨張宇宙のまんなかでぽつん、新世界を胸に
放たれた光は、誰かの見出す意味に向かい
真実をあぶりだそうと熱を照射する

僕らの想像力はいま 亜光速を突破して
あらゆる色彩を吹きとばしてゆくよ
redを沸騰蒸発させて
greenを回転収縮させて
blueを臨界突破せしめて
みえるものもみえなくなったら
みえないものがあらわれてくる
跳躍が加速する!

銀河と新銀河のあいだの
路地裏と野良猫のひげのはざまの
HB黒鉛と消しごむのすきまの
十六分音符と息つぎのいとまの
隠された任意の一点、
貴方の 誰かの 彼の人の思慕した一点が
きっとつぎつぎにあきらかになる
視点移動もせわしくなって
あたらしい理論も構築されるよ
夢見がちが加速してゆく!

夜明けのしんとした空を見てみてよ
点からまっすぐに光がとびだして、線になり
遠くの点とつながってゆくのが見えるはずさ

無関係にそっぽを向いてた
あの点と、かの点が
脈絡という名の生き生きしたファイバーで結ばれてゆく
脳内興奮伝達速度そのままに
電位の軌跡が宙を走り
縦横無尽に空間を橋渡し
はてしもなく、つづいてゆくんだ
幾重にも、ぎゅんぎゅんと
無数の線が 点が ひかりが
せかいを覆ってゆく

かつて見たこともない現象と情動の連結を
事実と空想の驚くべき感応を
貴方は見るだろう
見出さんとする意味に向かって
想像力があたらしいせかいをもたらしてゆくのを
それはたぶん 貴方だけが獲得した詩性だ
摩訶不思議なる向こうがわの物理法則さ

隠された点をあばき、どこかへ繋がる線をとき
まだ見ぬ全てへと加速しようよ
夢見がちの到達地点へ!


自由詩 詩的世界のグラスファイバー Copyright 北街かな 2009-03-13 20:11:26
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