かなたから
非在の虹

暖気は彼方から来る
唾液の滴る地平から
巨大な湿地帯を通り
夕暮れの砂漠を抜け
私の肺臓に進入する

絶える事ない暖気は
凶暴な森林を通過し
不安な脇腹をかすめ
ベッドに倒れる私の
気道まで爛れさせる

その暖気のみなもと
発生するのは寝室だ
昼と夜とを問わずに
とまらぬ男女の営み
生命の律動と発生だ

彼方に群がる女や男
声を上げ奇形に歪み
不定形に変化し続け
螺旋状に液体を流す
歓喜は乳白色に煙る

しかし私のベッドは
死の臭いが立ち込め
幼い命も生まれない
呪われた童貞と処女
暖気に埋もれるだけ

さきほどから 私の
ベッドをぬらすのは
どんな体液だろうか
(嗚咽まで聞こえ)
それはあなたの涙だ


自由詩 かなたから Copyright 非在の虹 2009-03-11 21:31:28
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