アラベスク
みい
なにもできない夜でした
膨大な量、足りなくなって 急に
大きく。大きく、吸い込むのです
膨張する一方で 血管に指先からの、キス
ぶうわ、からだ中をめぐる網 ひとえに
とじこめられるわたし、が
つもる一方で
なにも、できない夜でした
いよいよだわ、生きている。
なんで、飲み干せると思ってたんだろう
月を
さがしていたのです
少しも はみだしていたく、
なかったの それは
わたしの範囲
あの
ぶうわ、と めぐる血液のなか
心地いい かみさまがくれた
おんな、という わたし の
あの あなたのキスで
とじこめられるくらい
少し
きゅうくつ、なぐらい
欠けていたり、満ちたり、
ぼんやりと
してたかった
の
わたしは泣くたんび、顔が変わり
まぶた、はれ、ぐにゃり、
形成されるあいだも
あなたの だんだんと一人前になってゆく顔が
わたしはひどく 怖かった
わたしの少し、するどくなった顔を
あなたは少し、
きらった
アラベスク
それがたとえ、月並みでも
祈ったのです
たしかに、
わたしも あなたも それぞれ
飲み干せる
ように
わたしの指 ひどく走って
鍵盤からもれる、膨大な呼吸を
わたしは
汲んで、
まぶた、はれ、ぐにゃり
いつのまに
月も
みえないの
人さし指の音が
どろん と
聞こえる
わ
アラベスク