サンライズ
伊月りさ

こじつけて
逃亡します、今夜
明かす寝台列車
明けるわたし

行き先は戦地ではないから
安心して送り出して

きみの脳内の
道徳をくすぐった名作を携えて
逃亡します、今夜
逃げ出しても
逃がしてくれる優しさが

上手に武器が扱えるからって強いわけではない
きみを置いていく
わたしの行き先は
戦地ではないから安心して
送り出してくれる優しさが
こじつけてしまう
こえてしまう
夜が
海が
わたしに手を振って
わたしを呼んでいる
声が
旅が
先端のように
刺すのだが
弛緩するこの社会には
あまり痛くない

行ってくるね
ちゃんと
わたしを逃がしてしまってから
帰ってくるね
ちゃんと
片手分の夜でこえてくる
片手、指きり


自由詩 サンライズ Copyright 伊月りさ 2009-03-09 16:33:07
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旅と鉄道(仮)