花、荒野をこえて。
草野春心



 昨夜、
 光が花に成り
 音が花に成り
 匂いが花に成り、
 闇の膨らみの上、
 しとしと積もっていった。




  (そして、僕は僕だ。)



  円い定め、
  此処を囲みゆく。
  視るもの。其れは待たれ、
  聴くもの。其れは通り過ぎる。
  在が香を放ち、時が今になる。
  君への望を捨てた。希も絶も捨てた。
  だって、だって、余りにも夜だ。



  (時、今。)



  月光。
  其の残滓を浴びて、
  もはや蒼白き、部屋。
  滔々たる物思いは満ち溢れ、
  影として床を濡らす。
  三千世界は蛇口から、
  此の唇へ。



  (嗚呼、歌だ。)



  愛。
  求める者は何処へ行き、
  堪え、何処で息絶える。
  其の道程が僕を誘う。
  其の道程が歴史を呼吸する。
  命の灯、さながら一輪の花。
  燦、燦……



  (愛。君は一輪の花だ。)



  (生きな。)



 ホラ、
 白い夜は荒野だ。
 円い定め、
 其の先へ行け。
 愛の残滓、
 さながら花。
 求めれば
 僕はまた、
 僕と出逢う。





自由詩 花、荒野をこえて。 Copyright 草野春心 2009-03-08 17:11:23
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