少女と詩人
宮野



きみの輪郭がまだあわいときのこと
ぼくは涙をながしながらきみの詩を書いた
不器用なことしかできないから
瞼にうつるやわらかいきみの形とかそういうものを
一生懸命にことばにして紙にのこした

それはいけないことだとは思わなかった
でもきみにそれを読んできかせたとき
泣きながら書いたぼくと同じようにきみも
ゆっくりと涙をながした

こぼれた涙は詩を書いた紙をぬらして
きみをかたどったことばたちは滲んでいって
読めないほどにきみがくずれてしまったとき
きみは泣くのをやめた

ぼくは泣いた

きみがきみでなくなってしまったと
滲んだそれが黒を含んで透明でなくなって
しまったと
またきみが
ゆらゆらとどこへでも行ってしまえる、
所定位置なんかなくなってしまって
……



いま、きみの輪郭はまだやわらかく
ぼやけていて形はない

ぼくはまた無理にでも形づくろうとするから
きみはまた涙を流す







自由詩 少女と詩人 Copyright 宮野 2009-03-07 23:44:23
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