独りごとにすら、できない
石畑由紀子

目覚めると輪郭だけが残っていた はまって遊んだあとで、笑った


ソファの上に速度の違う一日あり胸とくとく打つ猫と私と


いまはもう見えなくなった補助輪のかろかろ我の胸に鳴り在る





物陰は数時間後にひだまりとなってふたたび物陰になり





まなざしを転調させて駆け上がる靴音ふたつ鉄塔に響く


彼女が夜戻らない日は水玉のネクタイが合図 おはよう、好きよ


同僚の恋のはなしを不可思議な水越しに聞くゆらめくランチ





飾られてガラス細工は夢をみる汚れた指に犯される明日





独りごとにすらできない愛されかたをしました 終電ふわふわと待つ


つないだ手にビー玉しのばせて君と正しき街を放火しにいく






※『題詠blog2009』参加作
 001:笑
 002:一日
 003:助
 004:ひだまり
 005:調
 006:水玉
 007:ランチ
 008:飾
 009:ふわふわ
 010:街


短歌 独りごとにすら、できない Copyright 石畑由紀子 2009-03-07 02:33:12
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