遊戯
汰介




――今日は、約束の目的地に向かう為、
町の中心街へ出て、時間には少し余裕があったので、私は、繁華街をぶらぶらと歩いていた。

回りの店や通行人を、見るとも無く歩いている内に、ふと、どう言う訳か不安がよぎり、
待ち合わせ時間を確認する為、メモ帳を開いた。
すると果して、見る日付を間違えており、
正しい日付は、自分が確認したと思い込んだ一行下、であった。
偶々、似た様な約束が三つ続けてあったため見まちがえたのだ。
――そう言えば、昨日と約束の時間が同じ時間であったのに、
何故その時気が付かなかったのだろう。
それを見ると、約束の時間はまだ、ニ時間も先であった。

私は、二日酔いと、メモの汚い字に振り回されている自分に、
少し苛々し、ちっ、と舌打ちをした。
その時、すれ違い様の営業風の男の鋭い、人の関心を惹く様な視線を感じ、
何かしら私の気持ちが引き、少し憂鬱になるのを感じた。
仕方無く時間潰しに、目に止まった喫茶店へと入った。

中は冷房が良く利いており、汗が退いていくのが感じられた。
その店内はコーヒー豆の挽いた匂いに満ちており、それがやけに鼻に付いた。
私は、夏の暑い時だと言うのに、何かが憑いたようにホットを注文し、
椅子に深くもたれてほうっ、と溜息を吐いた。

しかし落ち着く暇も無く気配を感じ、その方向に目を向けると、
果して、二十歳位の、少し陰気な感じの女と目線が合った。
私は知人のふりをし、彼女に近づいて行った。
――私はまた、別の「女」との約束を必然的に、延期する事になった。

そうだ。

この出合った「女」が、更に私のメモ帳の約束に増えて行く。
それは居た堪れない気持ちに私をさせる。
それは余りにも単純すぎて、見逃してしまう、そんな儚い愛なのだ。




















――んな訳無い。











未詩・独白 遊戯 Copyright 汰介 2004-08-20 18:54:51
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