◆ふゆを咲く
千波 一也



うすべにの桜を頬にほころばせ
ふゆを咲くのは
あどけない、春




さむい夜
機関車さながら息をして
笑っていたね
星くずの頃


転んだらふわふわでした新雪は
ただまっしろに
ただまっさらに




一年に一度の便り欠かさずに
いつか呑もう、と種まき続ける




凍てついた夜にも枝は枝として
耐えうる重みを
しなやかに、
聴く


守られてばかりでいると枯れてしまう
なにも守れずあだばかり咲く




目のいろも髪の硬度も透けてゆく
こおりのなかの
特殊な熱に




かなしくて、ときには汚れてしまっても
花という名は捨てられないね


ふゆはただ
こころの奥に凛として
だれかの春を
許してみせる











短歌 ◆ふゆを咲く Copyright 千波 一也 2009-03-02 23:09:06
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