レプリカ
大木円盤

8月27日
あの日の夜

君は確かに笑っていた

いや
そうだったと思う

時間は容赦なく
すべてを抽象化していく

匂いも体温も
そして声すらも

おぼろげで
脆弱に変貌した記憶が
僕の体を刻々と蝕み
生きようとする力とは裏腹に
実体だけの存在へと
僕を変貌させている

僕の体からは
もう匂いがしないのだ

カラカラに乾いた
偽りの笑顔を讃え喜びいさみ
ブリキのラッパからあふれ出す
その歓喜に満ちた音からは
もはや魂の香りすら
しないのだ

明日例え
世界が終わったとしても
さび付いた体を
引きずりながら
僕は生き続けるだろう

そして
喜びの唄を
歌い続けるだろう


自由詩 レプリカ Copyright 大木円盤 2009-02-26 03:38:52
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