梅林
AB(なかほど)


坂道を
どれくらい登れば
振り返ってもいいのかな
もちろんそんなことは
てめぇの勝手
と言われればそれまでのこと
ではあるけれど
ほら
横浜のはずれだとさ
ちょっと駅から歩いただけで
背中にきれいな夜景がひろがってさ
左手に見えるコンビナートも
右手に見える海岸も
遠くに見える軍港も
いつ
振り向こうか
なんて楽しみにしながら
歩くのさ
君の手を引いてさ
歩いてきたつもりの道がさ
いつの間にか
手を引いてもらってるのは
僕のほうだったなんて
きっと
振り返る好機も
逃してしまったんだよ
振り返ると
見えるはずの海の景色に
さよならの向こう側に
こんにちはの向こう側に
いくつもの笑い顔が
溶けていく
そう
僕らの歩いてきた時代も
水彩画のように
ぼやけてゆくのだろうね

左手に見えるコンビナートも
右手に見える海岸も
遠くに見える軍港も
きれいな絵になってしまう頃に
もう一度振り返ると
梅の花にも似合わぬ
二月の風が吹く
少しずつでいいよと
毎年吹く風が














自由詩 梅林 Copyright AB(なかほど) 2009-02-24 23:27:23
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