早春断章
塔野夏子

銀の三角形の頂点から
菫の花が
咲く

波打つ白鍵と黒鍵の上を
踊るのは
かすかに虹色を帯びた
透明な球体たち

回転木馬のまわりを
ほの甘い唇たちが
はばたく

真珠色の円錐の尖端から
淡い光が
たなびく

華奢な手品師の長い指さきに
戯れるのは
このうえなく繊細に編まれた
風のレース

吊られた窓から
薄緑の帽子が
舞い込んでくる





自由詩 早春断章 Copyright 塔野夏子 2009-02-11 18:23:40
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
春のオブジェ