湯久保(山上集落)
Giton

 凍りついた急峻な山道を、息を切らせて、小一時間ほど登ると、山上集落があった。いちばん見晴らしのよい場所は、墓地になっていて、新旧の墓碑が、ふんだんに陽を浴びていた。
 道祖神の前で汗を拭いていると、むらのいちばんよい場所を墓場にした昔の人が、一瞬にして理会された。
 ぼくは、日向ぼっこしている墓碑の群れに、
 「御苦労様でした!」
 と、深く一礼し、また歩き出した。


散文(批評随筆小説等) 湯久保(山上集落) Copyright Giton 2009-02-10 22:54:40
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