凍りついた急峻な山道を、息を切らせて、小一時間ほど登ると、山上集落があった。いちばん見晴らしのよい場所は、墓地になっていて、新旧の墓碑が、ふんだんに陽を浴びていた。
道祖神の前で汗を拭いていると ....
ぼくらはみな太陽のきれはし、町も山も河も森も
いきものだらけの海も、君もぼくも;
ぼくらがやってきたのはあそこだから、
あそこをみるのはたぶうだ、めがつぶれる。
フォトンのつらなりに解体さ ....
(時空円錐)
虚空で支えを喪ったじょうごのように、
尖った先どうしを付けあって、
危なかしく身を支えているこの世界:
君とぼくの航跡は、離心率にあやつられ、
交点の夢をみながらも、一足ごとに ....
丘と木々に円く囲まれた円い湖に
憧れていた、いつか行ってみたいと思っていたから。
社会科の時間は、いつも地図帖を探していた;
北海道に1個、鹿児島県に1個、お誂え向きの湖を見つけると、
....
あなたに会ったのは、もう1年以上前、
晩秋の午後、あなたは斑らに錦糸を纏っていた、
その温かそうなあなたの胸と、あなたの厚い肩が、
ぼくの目には焼きついていた;
そしてあなたには触れること ....
夜空から君は見下ろしていた、きみのマシンときみの身体が旋回し、
正確な軌跡を描いて飛び散るのを:
きみは悔しかっただろうか、それとも、ほっとしただろうか?
きみは、いつものようにぼくらに笑いかけ ....
「主はガリラヤへ往かれた」★
牧師はそう言って口を結んだ:
教会で行われた簡素なお葬式、
ぼくは、ほかの会葬者のまねをして、一輪の花を柩の上に置いた;
それが、きみとぼくの別れのすべてだっ ....
そらにはあらゆる匂いがある、
くうきにはあらゆる色がある;
ぼくのいろが、くうきにとけてしみてゆく、
きみのにおいが、そらをうすくそめてゆく;
ぼくのとけたそらがきみにふきよせる、
きみ ....
ぼくの耳に入ってくる音が、世界を創ってる。
光あれ!そして、ぼくに光があった。目は見ない。
耳は聞こえない。流れ込む虹色カクテル、
真夜中でも朝のびばるでぃ、神は滅びない。
聞かないぞ ....
遠ざかれば遠ざかるほど
いや燃え上がるきみとぼく
近づけば近づくほど
かなしく水漬くきみとぼく
けがれなき情欲の炎
絶やさぬよう人目をしのび
清らかな流れに友を
浸すぼくらの洗礼 ....
いつも何も言わずに、静かに見つめているあなた、どんなに
暗い夜でも、窓を開けばそこにいるあなた、近づいて見ればあざだらけ
なのに、冴えわたった夜空の下で妖しく耀くあなた、人目避ける旅人の
足もと ....
{引用=在上越国境嶺上観望越後而詠。}
(長歌)
くにざかひ オキの石根{ルビ=いはね}に
なづみ立ち ふりさけ見れば
たたなづく 越{ルビ=こし}の嶺{ルビ=ね}らは
雪被{ルビ=かづ}き ....
春の足音まだ遠く、
雪に足跡追う猟区;
かえでの青い若枝に
見え隠れ、けぶる焼け谷。
息白く、角凍えても、
背には湯気;阻むかえでも
ものとせず、真一文字か、
谷飛び越える親子鹿。
....
1 2 3 4 5 6 7
0.08sec.