円錐曲線
Giton

(時空円錐)
虚空で支えを喪ったじょうごのように、
尖った先どうしを付けあって、
危なかしく身を支えているこの世界:
君とぼくの航跡は、離心率にあやつられ、
交点の夢をみながらも、一足ごとに微分され、
永劫の孤独へと向かう二次元曲線:

(楕円)
あるときは、ゼロのまわりを経めぐって、
決して遠くへは脱け出せぬ時空の虜、
きみの軌道はエレクトロンの雲のようで、
ぼくの存在確率はいつも稀薄だ。

(放物線)
あるときは、出会った瞬間ふたてに別れ、
決して二度と出会いはしない無限遠へのひとり旅、
平行なのか?平行じゃない!漸近するか?漸近しない!
離れて行くか?離れもしない!交点は?無限遠、宇宙の水平線!
十年旅して振り返るなら、
ふたりの軌跡は、最初の一時間を丸写しした拡大図。

(双曲線)
そして、あるときは、ふたりの軌跡は決して交わらぬ、
時空の四つの象限に、手足伸ばして根強く探す君の影、
法則のように確実に、ぐんぐん近づくきみとぼく、
それでも決して触れはせぬ、
出会いの定めは、無限の彼方のさらに先!

(収束点)
こうして時空の円錐は、どこで切ってもままならぬ、
それならいっそ、ぼくたちは、螺旋を描いて落下して、
無一物のゼロ点で、やっとふたりはひとつになれる、
――そして、ぼくらは無になった。


自由詩 円錐曲線 Copyright Giton 2009-02-10 22:10:25
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