別れ・1
Giton

「主はガリラヤへ往かれた」★

牧師はそう言って口を結んだ:
教会で行われた簡素なお葬式、
ぼくは、ほかの会葬者のまねをして、一輪の花を柩の上に置いた;
それが、きみとぼくの別れのすべてだった。

悲しくもならない、涙も出ない。
友人たちは、なんと非情な男と思うことだろう。
嘘が大嫌いだったきみのために、
悲しそうな身振りだけはしたくなかったのだ。

きみは、はやくアパートへ帰りたかった、きみは突風に向かってアクセルをふかした;
腕をにぎってガザの砲弾のなかをくぐった、彼女の待っているアパートへ。
しかし、君に向かって来たのは、戦車ではなかった;

きみは、不正義とたたかうまえに、ひとのありふれた過ちに躓いた。
十字架に吊るされるでもなく、悪意の凶弾に倒れるでもなく、
右足で爆音を奏でながら、きみの魂は、もう夜空を上昇していたのだ----
★「あの方は死者の中から復活された。そして、あなたがたより先にガリラヤに行かれる。そこでお目にかかれる。」(新共同訳、マタイ28,7)



自由詩 別れ・1 Copyright Giton 2009-02-05 23:10:03
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