飼い猫
浅井実花

漆黒の髪ゆらゆら
白い肌に触れたい
風だけがわたしの気持ちを運び
雨だけがわたしの代わりに咽び泣く

その袖を掴むことも出来ず
あなたは何処へわたしは何処へ

言葉にならないこの思いもいつかは灰になる
あなたの肌のような白い灰になる
そうしていつかは消え失せてしまう
白骨のように

残酷にも別れは訪れる
つぎはぎだらけの言葉に
頷く声だけが遠く遠く

漆黒の髪ゆらゆら
白い肌に触れたら
輪廻の果てなどなく最果ての地などなく
何者も存在しない

この思いはまるで蜘蛛の巣に嵌った様
螺旋の中であなたを思う
どんどんと侵食されていく身体で
あなただけを思う

右腕を貪るあなたに愛してると言う
左足を貪るあなたに生きてと乞う
最後に残された両の目に映るのは
まだ面影のあるあなた

張り裂けそうな痛みと
張り裂けそうな想いと
あなたがもう存在しないという事実を

私はまだ隠している


自由詩 飼い猫 Copyright 浅井実花 2009-02-02 18:44:59
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