ライガー
嘉村奈緒


やろうとしていたこと

鍵を差し込むべき鍵穴に
母のズロースを差し込もうとしていたこと
そうだ 父に見せなくては、と思い立ち
犬を連れて落雷を待ち焦がれていた ということ


落雷の色は金ぴかだ
そうゆう夢も見た
犬は金ぴかじゃなかった そうゆう事実だった
手に握り締めていたのはズロースなんかじゃない鍵なんかじゃない
父のただれた焦げ付きなんかじゃない けど 犬が鳴いた
燕が逃げた 私は泣いた
ただ家に帰る方法を忘れてしまっただけのこと





単なる 独りということ
母は女であり金ぴかじゃなくて鍵の在り処を知っていた
ということ 父は男であり金ぴかじゃなくて合わせ方を知っていたという
こと 私は盗める そうだ 女も男も犬も連れ出して
平べったい静かな落雷を落雷が光、焦げ付き 焦がれ
奇遇で思い出せる母の顔も父の顔もある 握り締めすぎて縮れる鍵穴を忘れて


犬を捜す




それから 私は 差込口になる



自由詩 ライガー Copyright 嘉村奈緒 2003-09-18 21:17:29
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