わたしの悲しみは幻でできている
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夕焼け時刻には出歩かない
気持ちが恐くなるから
真っ暗に包まれてあんしんになったら
そしたら、帰る

終わりがあることに救われて生きている
ただ、その瞬間を待っている
帰り道のわたし、まっすぐに歩けていないのだろう
すれ違う人がみんなよけてくれる

あ、月だ
あの雲の向こうが明るい
消えてもまた膨らんでさ
いつまでも終わらないから 月は 
恐い
ポケットの中で湿っていく指先が
このまま溶けてしまうと気づいて
なんか笑っちゃった
遠くで犬が吠えて、すぐにやめた
まるで試しに声を出してみたってふうに
でも、いつものいい声が出ないみたい

ねえ
悲しい気持ちを
君に打ち明けようとしてやっぱりやめとく
どうしたってわたしは
わたし以外にどこにもいないんだもの
安っぽい歌でもいいや
可愛いお菓子でもいい
そういうものの方がよっぽど歩み寄れる気がするから


帰り道の終わり
だれにも聞こえないように
試しにためいきついて
でも涙は出ない
わたしの悲しみは幻でできている





自由詩 わたしの悲しみは幻でできている Copyright ________ 2009-01-08 01:37:42
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