大阪で
船田 仰


あいつはとても優しい
プラスチックの歯ブラシが風呂場で
ふいに落ちたときにおもうくらい
それくらいさみしい
大阪で

散乱する破片を踏んでみてから
それが言いたいことだと気付く
僕らはいつも大きな怪獣の背に乗って
写真におさまっているみたい
はいりきらないのに
馬鹿みたいに
ただ右腕をあげて空を
持ち上げて
くろくなった水を全部捨てて
気付くだけ
熱気がたまった街を越えようと
すりぬけて、ねえ

終電
ビーズみたいな灯りひとつ、ふたつ、25くらいまでは
見てるふりできるのに
かばんが肩を避けたら
もう戻れなくなっていたたまれないんだ
きみが言ったこともぼくが言ったことも
どこかのゴミ箱でうずくまったのです
だって呼んでくれないじゃないか、とか
大阪の
まっくろなガラスは何をも変更しない
あいつは優しいから
ぼくはしあわせじゃない気分になる、のさ
部屋にかえれば散乱した食べ残しの言葉
吐いて
それくらいさみしく
ぼくは馬鹿でもいいとおもった
大阪で



自由詩 大阪で Copyright 船田 仰 2004-08-12 20:58:24
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