カフェ・ミラージュ
AB(なかほど)

魚津の水族館で
イシダイの一尾が輪っかを
するりと抜ける
そのとき
古い学習図鑑の白黒ページのイラスト
を思い出した

それが
    かげろう



 蜃気楼の街 
 ひとりで歩いてるのは
 もちろん
 君を忘れるための旅であり
 そして
 もちろん
 忘れることなんてできるわけもない
 のに
 だいたい
 忘れるための旅なんて
 忘れることなんかできない 
 と
 宣言してるようなもので
 蜃気楼なんてものを 
 探しているぐらいなのだから
 なにか君への思いを
 大事に
 大事に
 オブラートにでも包むつもり
 だったのだろう 

 そして

 君の知らない街の
 一口のコーヒーは
 僕の気持ちを包もうとしたオブラートを
 簡単に
     溶かした


 カフェー・カフェー・カフェー

  君に告げたいことがある 
  君に告げたいことがある
  君に告げたいことがある


 カフェー・カフェー・カフェー

  君の知らないこの街の
  君の知らないこの道の
  君の知らない店のこと

  そんなことより


 カフェー・カフェー・カフェー

  君に伝えたいことがある
  君に伝えたいことがある
  君に伝えたいことがある

  君に伝えたいことがある


       「カフェー・カフェー・カフェー」




帰りのカフェで
君を
思い出した

つまり

それも

    かげろう






自由詩 カフェ・ミラージュ Copyright AB(なかほど) 2004-08-12 18:19:58
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