聖域
夢月


ドーナツを買った
大好きなチョコファッション


ひと口めをかじった後で

ドーナツの代金は
支払ったけど

ドーナツの穴の代金は
支払っていないコトに
気がついた


だから

ドーナツの穴に
触れないように

ドーナツの穴を
崩さないように

そぉ〜っと
そぉ〜っと
頬張った


食べ終えると
ドーナツの穴は

甘い香りを纏いながら

透き通った風船のように

フワリフワリと
舞い上がり


天井に行き着くと
そっと弾けて
溶けていった‥





いつか 私が
神様に召される時


神様は
ひと口めをかじった後で

私の心に
ポッカリと空いた穴を
見つけるだろう

その穴は
私のものではなく

他の誰かの
居場所だったと
気がつくだろう


だから 神様は

その穴に
触れないように

その穴を
崩さないように

そぉ〜っと
そぉ〜っと
頬張るだろう


食べ終えると
その穴は

あの人の香りを纏いながら

透き通った風船のように

フワリフワリと
舞い上がり

どこまでも
どこまでも
舞い上がり


青く澄んだ空に
溶けていくんだろうな‥




自由詩 聖域 Copyright 夢月 2008-12-30 14:38:53
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