月の輪郭、風の影
たりぽん(大理 奔)

鳥取の冬雲が北風に迷っています
今日は大潮だというのに月が
複雑にからまっているのです

 私の言葉は上手でしょうか
 そんなことよりも伝えたいことの、
 たとえば月の輪郭を
 なぞる指先があることが
 ほんとうであればいいのです
 月があることが美しいとかではなく
 ほんとう、であればいいのです

鳥取の冬雲が北風にとまどっています
そらはどこにでもあるのではなく
どこにあってもそら、なのだと

 とても上手な技巧に彩られた
 素敵な誰かの言葉は
 私の胸を焦がすことはありませんでした
 あなたの手のひらに掴まれた
 ひとりよがりな世界よりも
 わだちのない道程を
 傷ついてもいいからと不器用に
 指し示した小さなほんとうを
 信じたいのです

鳥取の冬雲に立ち尽くしています
私の言葉は儚い振幅に変換されて
糸のような信号線を北風に吹かれ
緩やかに弧を描きながら行くのです

正しいとか美しいとかではなく
わたしは私の輪郭のまま北風に
吹かれながら行くのです

吹かれながら、行くのです





自由詩 月の輪郭、風の影 Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-12-22 00:30:12
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