がらんどう
恋月 ぴの

「死んでしまいたい」が口癖な君に
「生きていれば良いことあるよ」
と言いかけて言い切ることができなかった

それを時代のせいにしたところで何になるのだろう

夢とか希望を持ち難いこんなときだからこそ
敢えて言い切るべきだったのに
言い切れなかった私がいて
そんな私の心模様を察してくれた優しい君がいる

ホームの端に立ち竦み閉ざされた風景を見やれば
向う側へと押し流されてしまいそうな気がしてならない

誰かに繋ぎ止めて欲しいと振り向いても
温もりの気配など認めようも無く
孤独を強いられることへの恐怖に慄いてしまう
そして
そんな思いを単なる甘えと切り捨てられるほどに
私たちの心は荒みきっているのだろうか

「死んでしまいたい」が口癖な君がいて
それは優しさ故の口癖なんだと勝手な解釈をする私がいる

吹き抜ける風の通り道に立ち竦んではいけないのだと
誰かが囁いてくれたような気がして
ホームの端から半歩だけ明日の側に身体を寄せた




自由詩 がらんどう Copyright 恋月 ぴの 2008-12-18 22:54:38縦
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