Kくん
さとう 星子

彼は今、
平和に暮らしているだろうか

彼の友達が真夜中に私の家に来た
「亡くなったから、彼に線香をあげに来てほしい」
私は戸惑った

彼の友達は言った
「君が初恋の人だったから」

私が覚えているのは
彼と同じ席になった時
なぜか周りにひやかされたこと
同じ部活に入っていたことを
卒業アルバムで知ったこと

彼の作文にこう書いてあった
「僕は将来 宇宙に行きたい」

彼はとても勉強ができて
算数の時間に
一、十、百、千、万、・・・・・・・と
果てしない数を頭で巡らせながら答えた

あの時の彼の目の奥が放った
未来を見据えたような煌めき

女の子から声をかけられると
少し戸惑ったような純朴な仕草

もう
この世界には
彼は
私の記憶にしかいない

命 命 命 

「生きるということは
死なないということ」

そんな極論が
私の頭の中でまわってまわって
肉まんを温められるくらい熱くなる

Kくん
君は今
平和に暮らしているだろうか

そして
宇宙のことを思い
月に旅立つ夢を見ているのだろうか


自由詩 Kくん Copyright さとう 星子 2008-12-15 16:14:12
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