岸
石畑由紀子
あんなに荒れ狂っていた
場所
砂が乾いてゆく
反転し
苦しく水を蹴った足の記憶のまま、踏みしめる
砂にはわたしの
しずかな歩みだけが続いてゆく
高鳴り
呑みこむ夜が病いなら
何度さらわれても朝がきて、この岸を
離れられないわたしの
あの熱量は
どこへ
《行かない、で、
水平線、とおく光って
弔いのように鳥が 《さよ、なら、
はじけ飛んだ
寄る辺なく半身を埋めて
痛みかがやく漂流物を
ひろいあげ
耳をすます、その
波の音に
ひとつ
ひとつ
名前をつけてゆく
自由詩
岸
Copyright
石畑由紀子
2008-12-08 18:25:15