世紀末デパート
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63階の視聴覚室で試験勉強をしていた
保健体育の先生はスパルタで
教室に入るなり生徒を叱ったりしていた

ふと大きな爆音が響くと
館内アナウンスが流れだした

「42階から火の手が上がりました
皆様すみやかに脱出してください」

僕は親友と一緒に非常階段を駆け下りた
ビルは不自然なくらい揺れていて
いつ倒れてもおかしくないような状態だった

逃げる途中小さな子どもがいた
親とはぐれたのか1人で茫然としていた子どもを連れて
また非常階段を駆け下りていった

火元の42階は凄惨たる状況だった
しかもここで階段が途切れているため一階に下りるには
どうしてもこのフロアを通り抜けないといけなかった

だけど一階へ下りるための階段の手前で
連れていた子どもがキャッシュディスペンサでいたずらしだした
どんなに急かしても言うことを聞かない
仕方なく僕はその子を見放した

その瞬間は心が痛んだけれど
一階に着いた頃には解放感が支配していた
レスキュー隊やらマスコミが押し掛けていて
現場は人でごった返していた

ふとフードコートのベンチに目をやると
上の階で見放した子どもが座っていた
どうやら親と出会えたらしい

外から見たビルは不自然な揺れ方をしていた
出火原因は分かっていないらしい

各地で多発する天変地異
高く積み上がり天を目指す亀の群れ
それはやがて訪れる前兆でしかなかった

銀河中の星が見えるほど晴れ渡った夜
テレビで見たような白く輝く円盤が
僕達のちょうど頭上にやって来た

誰かが言った

「世紀末に恐怖の大王襲来ってか」

円盤は生け贄を探しているのか
何度も質問を投げ掛けてきた
僕達はトラックの下に隠れながら
誰かが名乗り出るのを待っていた

不意に隣にいた男性が
手を挙げて円盤の前に出ていった
彼は光に包まれて消えていった
それでも円盤は質問を止めない

誰かが言った

「とにかく今は逃げ延びるんだ
 反撃の機会が訪れるかもしれない」

僕は親友と話し合った
「どうせ世界が滅びるなら怖くないよね?」
「うん。」

そして僕は親友と手を繋ぎ
円盤の下に出ていった
二人は光に吸い込まれていった


自由詩 世紀末デパート Copyright 1486 106 2008-12-07 04:58:32
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