【短歌祭参加作品】アラウンド・ザ・ワールド
吉田ぐんじょう
早朝に剃刀を買うコンビニで 剃髪用です 袋いいです
昼下がり主婦がミシンを踏む音は 人を撃ち抜く練習に似て
夕暮れが鼻血のような色してた 鉄のにおいが漂って、冬
にんにくのあのふくらみを撫ぜるたび 欲情しちゃう 特に夕方
砂糖ってクスリにとてもよく似てる さびしい夜にすぐ効くところも
星空を指令のようにサイレンが揺らし始めるひとがまた死ぬ
自販機の釦がすべて売り切れと表示されてる深夜二時半
物憂げに深夜はばたく鳥かごの小鳥の舌は細くて硬い
「東京へくらげを買いに行って来る」そう言い残し夫は消えた
間違いを消して乾いたホワイトと同じ色して明けてゆく空