ハイブリッド・スピナッチ
銀猫

「きちんとたべないとつよくなれないよ」

そう言われて
幼かったわたしは
他ならぬポパイに憧れ
うっすら残る灰汁のえぐみに耐えながら
ホウレンソウを頬張った

ホウレンソウのお浸し
ホウレンソウ胡麻和え
ホウレンソウ味噌汁
とにもかくにも
ホウレンソウ

つよくなりたい一心で
かなり食べたつもりだったけれど
それでもまだまだ
足りなかったらしい

そうだ、
ポパイのホウレンソウは
缶詰めだった!

大人になったわたしは
あっちこっちの食料品店を探したが
ないよ、
ない
ホウレンソウの缶詰めなんて
売っていない

このままでは
ブルートに似た、
たちの悪いやつにやられてしまう
ホウレンソウの缶詰めはどこにあるんだ!
今食べなくちゃだめなんだ
もうすぐ一話が終わってしまう

ホウレンソウの
缶詰め、缶詰め!
明日は東京の
紀ノ国屋まで行ってみよう


「きちんとたべないとつよくなれないよ」







自由詩 ハイブリッド・スピナッチ Copyright 銀猫 2008-11-27 10:56:12
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