グリーン・アイズ
銀猫




咳がふたつ
階段を上ってきた
夜の真ん中で
ぽつり
行き場を失ったそれは
猫の眠りさえ奪わず
突き当たった扉の
その向こうで
遠慮がちに消えていく
八十年余りを働いた生命は
雨が降ると
夜更かしをすると
約束事のように
風邪をひく
老いた魂が
濁ったみどりの眼でわたしを見る
はう おぅるど あー ゆぅ?
あい あむ のっと
のっと おぅるど!
ラムネびんにつっかえた、
びぃだまのごと
喉はびくついて
咳、
もうひとつ
薄い膜が
その眼にかかりませぬように。
おそるおそる視線を返すと
闇の中でもみどりは
はっきりと見て取れて
胸をなでおろす
朽ちてゆくのは
神々の取り決め
抗うきもちは誰のため?
明日はわたしもみどりの眼






自由詩 グリーン・アイズ Copyright 銀猫 2008-11-18 01:26:57
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