土偶
たりぽん(大理 奔)

海から流れてくる雲を
ぼんやりとながめていると
失われた呪文を思い出します
焼き締めた土人形を
たたき割るときに
病んだひとの名を呟く
あの、呪文

  鳥取の冬空は
  ほんとうの空気のように
  透明です
  地図がもっと小さくて
  世界に果てがあると
  信じられてた頃の
  遠い空です

砕いてしまいたい土人形が
いくつもあります
わたしを焼き締めて
たたき割り
何でも知ったつもりのあいつらの名を
誰も知らない呪文にして

  滝を抱く森の深くから
  あおくさい霧が流れ出します
  そらでは稲光が不機嫌で
  呪文が成就されるまで

果てがありますように、
そして見知らぬ世界を
許してくださいと




自由詩 土偶 Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-11-20 00:14:49
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