白い書物の中で
小川 葉

 
白い書物の中で
あなたとはじめて会った
数千年の時を経て
変わらない声と声が
光に影を差して立ってる
向き合いながら
照れくさそうな文字になって

たとえば
あなたが好きですは
あなたが好きでしたに
書き換えられることなく
あの頃のまま
命がちゃんとふたつあるように
向き合ったまま立っていて

書物とは
この世界を意味してる
けれども命にはかぎりがあるから
記された文字は時を越えて
物語として生まれる
死に絶えることのない
語り継がれる
永遠という名の
白い書物になって

たとえば僕は手紙を書く
今はまだ白い便箋が
気持ちで埋め尽くされたとしても
あなたに届く確証もないまま
それでも光に影を写すだろう

生きた証のように
僕の言葉は文字となり
立ち尽くしたまま
永遠を語りつづけるのだ
まだ見ぬ星で暮らす
あなたに向けて
 


自由詩 白い書物の中で Copyright 小川 葉 2008-11-09 20:22:43
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