月旅行
kawa

人は歩く
けれど目的地には進まない
逆走さえする
それでも歩く理由は?


進歩
という言葉を君はよく使う
『進歩した』、とか『進歩ない』、とか
君の目に写る進むべき場所へ向かえず
じたんだ踏んで
全速力で逆走する君
そのそばで同じように走り回る僕
それはとても共に歩むといえるものではなく
まるで二匹のカエルの阿波踊りだ


悔しくて
君と僕の流す涙が形を変えて
ロケットになり空をとぶ


『私にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ』
月にはじめて着地した、アメリカの宇宙飛行士の言葉らしい
だけどその一歩を積み重ねても
あの小さな衛星をぐるぐる回るだけじゃないか
結局どこへも行けやしない


歩く理由
が、わからなくなって
どうでもよくなって
座り込む
その僕を踏みつけながら
相変わらずどたばた走り回る君
の涙が
うらやましいから
僕はまた歩く


自由詩 月旅行 Copyright kawa 2008-11-04 12:37:17
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