冷えすぎた夜明け 第二部
北村 守通

  捨てられた魂は堕ちてゆく
  やさしく冷えた
  雪の中に輝きながら
  魂は堕ちてゆく
  雪の中に輝きながら


手のひらに
髪の毛に
コートの上に
鞄の上に
舞い落ちる
魂は
舞い落ちて
消え去ってゆく

走馬灯の様に
駆け巡るはずの記憶の物語は
真っ白に
真っ白に
消されてしまって
絶版になってしまって
もう二度と
読むこともできまい

足元に
私の知らない
幾つかの眠り
私の知っている筈だった
幾つかの祈り
さし伸ばす
手のひらを
するりとかわし
あるいは
手のひらにて
消え去って
舞い落ちる
舞い落ちる
なお
舞い落ちる
足元に
泣きすがる
泣きすがる雪を
踏みつける
歩く
踏みつける
歩く
踏みつける
踏みつける
歩く
霧の中


  泥にまみれて
  なおも笑う
  雪の白さに

  ふと
  立ち止まり


苦々しさに
頬は震える
膝はおちる
頬は震える
雪は震える
膝はおちる

雪となる


  やがて
  陽が昇る
  福音の名の下に
  掃かれた雲の
  空しい背中を運ぶ
  重い足に
  突き刺さる
  無邪気な
  虹の笑み
  しみわたる


自由詩 冷えすぎた夜明け 第二部 Copyright 北村 守通 2008-11-03 23:23:36
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