月光
たもつ

 
 
綱わたりをしていると
月がきれいだったので
僕はまっさかさまに落ちていった

形の良い吉川くんがそれを見ていて
僕らはレンガ遊びを続けた
吉川くんはレンガをちゃんと地面に積んで
その様子が少しうらやましかった
僕には何もない
地面も良い形も

このまま落ちていくとどうなるんだろうね
と聞くと
壊れちゃうかもしれないね
吉川くんはこっちを見ないでそう言ったけれど
僕のために泣いてくれた人は
吉川くんが初めてだった

壊れちゃうかもしれないね
落ちる、ということは
多分そういうことだ
僕はふわりと着地して
吉川くんのお通夜に出かけた
 
 


自由詩 月光 Copyright たもつ 2008-11-03 17:36:22
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