「ともだちの、うた」
長谷川智子




 ジャミロクワイの1曲「Virtual Insanity」の一節

 ♪Futures made of virtual insanity now
  always seem to,be govem'd by this love we have・・・

  ヤバイってよ未来 / これから出てくる後ろ向きの幻

 テキトーに
 口ずさむ 訳
 まるでデタラメ

 この曲教えて
 消えてった友達
 今は生きてるか死んでるか判らない


 あれはいつだったか
 花火大会の裏通り
 はぐれないよう
 手を握って走った
 花火を見ることよりも
 ‘したくなった’アレのできそうなトコロヘ

 もし
 これから
 この場所も
 生き物も
 僕らが望まないところへ向かうのなら
 すぐひとつに、
 いっしょになろう、と・・・


 と。


 けっきょく
 あの時は
 手も
 足も
 気持ちも
 かじかんで
 なにもできなかったけど
 そのことに
 むしろ胸をなでおろしていた
 胸の
 ワクワクも
 ドキドキも
 シンクロしてた記憶がある


 もともと私は
 ‘ああなる’ことに
 興味関心ともになかった
 ‘なかった’というより
 ‘こわかった’
  し
 ‘おびえていた’
 のだろう

 ぼんやりした
 もやの中
 黒っぽい紺色の
 羽交い締め
 それしか覚えていない

 時に海を渡り
 何人か
 ‘たのしく’居られるひな鳥のさえずりの中に
 その時々
 身を置けた
 今おもえば
 しあわせだったのだろう
 100年プリントのくせにすでに輪郭のぼやけた写真が
 それぞれ物語る


 …


 ぴーちく
 ぱーちく

 ぱーちく
 ぴーちく

 「あまねはすきなひといないの?」
 「えーっ!?」
 ほんとうは
 ≪しるか≫
 と
 おもいながら
 「うん。でもジョン・レノンは憧れかな」
 みんな黙ってしまった


 けっきょく
 こんな感じで
 大人になった
 これは今も
 続いている

 誰かが
 誰を
 彼らが
 彼を
 求めざるを得ないところに追いつめてゆく
 狂った
 黒い
 あめが
 甘く
 沢山
 降り積もる

 ま ず い 。
 まずいんだよっ!!!
 こんなモノっ!!!!

 私の口にも運ばれ
 すぐ
 吐き出す


 吐いて
 吐いて
 吐きまくる
 吐いて
 吐いて
 また吐いて
 そのループから私を救った人がいた
 同じ
 学校に
 通ってたコ

 彼女は気がつくと
 そばにいた
 初めて会った日からお互いに
 他のコたちと違うモノを感じてたんだろう
 女子高でルームメイトだったし
 図書委員だったこともあるかもだけど
 日増しに
 2人が重なる
 時間と
 空間が
 増えていった

 遠すぎず
 近すぎず
 近すぎず
 遠すぎず
 私が望んだ
 手をつなぐくらいでいい
 並んで歩くくらいでいい
 いわゆる
 こんな
 距離感
 これさえあれば…
 で本当は済まないけど
 そう考えざるを
 得なかった

 思い返せば
 結局
 あの時の彼とは
 そうでもなくて
 私の
 中で
 存在が
 大きく
 なっていったのは
 彼女に対してだった

 あれから
 とにかく
 まさぐるように
 むさぼるように
 エロ本を読み漁った
 けど
 あの
 熱さと
 触れる
 感覚の
 前には
 かすんで
 遠く
 飛んでって
 しまう
 かすんで
 かすんで
 はては
 消えて行ってしまう
 いつだったか
 2人で読み合った桜沢エリカの本
 このぐらいの思い出が
 頭に残ってるくらい

 でも
 やっぱり
 要するに
 彼女といると
 楽
 自分に
 しっくり
 くるし
 自分でいられる
 それは
 ずっと
 あった
 時に
 家族よりも
 近くに
 いたような
 印象がある

 日はまた昇り
 くり返す

 くり返す
 くり返す
 エネループ

 ループ


 …

 あれから
 さらに何年か経った
 ある朝
 電話が鳴った
 母と誰か
 聞きなれた声が
 セッションしてる
 しばらくして母から
 「んじゃ、あまねに代わるね〜 けいちゃんからぁ〜」
 思い出した!
 彼女と
 私との間よりも
 彼女と
 私の母との間のほうが
 イイ
 出ようか出ないか
 出ないか出ようか

 …

 「もしもし・・・」





自由詩 「ともだちの、うた」 Copyright 長谷川智子 2008-11-01 09:07:09
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