夜の観察者
塔野夏子

マリオネットたちの仮想的革命が
左心房をよぎる
窓の外では夜の街が
書き割りのように翻る
カレイドスコープの中で廻転するのは
天使たちの落とした翼が
あまりにも降りしきっていた日々だ
知らないうちに
壁に書き散らされていた文字たちは
淡蒼球の優雅な発光に
見とれながら消えてゆく
硝子の地球を
指先で玩ぶのにも飽きた誰かが
銀色の金属製のハットをかぶって
中空の扉から出てゆく
きっと始まりも終わりも意味も失くした
迷宮のパーティーへ行くのだろう

無機質な夢が天井に絡みはじめたので
そろそろ僕も
見失っていた寝台へと辿り着くだろう



淡蒼球:脳の部位の名称


自由詩 夜の観察者 Copyright 塔野夏子 2008-10-27 11:25:08
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